第五百二十八話 空と地下散歩②
(僕のためにしてくれた胡桃の努力を、無駄にできるわけがない。それに体どうこう以前に、いい加減この地下について、自分の目で見て回りたいっていうのもあるしね)
と、空がそんなことを考えてから数分後。
現在――。
「で、ここどこかな?」
「…………」
と、気まずそうな表情をしているのは胡桃だ。
空はそんな彼女へと言う。
「えっと、地下とは思えないほど綺麗な花畑があるから、そこに案内してもらうって聞いてたような」
「…………」
さて。
現在、空の目の前にあるのは花畑などではない。
これはどう考えても。
「遊技場だよね、これ」
あるのは開けたスペース。
そして、そこにはビリヤード台やダーツ。
さらには卓球台までもが並んでいる。
きっと、避難した住人のために作ったに違いない。
空はそんな遊技場を見ながら考える。
(まぁ、地下にずっと避難してたら息もつまるよね。上は怪人が闊歩してるわけだし、こういう気分転換は必要かも)
気分転換。
そう、気分転換といえば。
「ちょうどいいからさ、僕達も気分転換しようか?」
「え?」
と、ぴくりと肩を揺らす胡桃。
空はそんな彼女へと言うのだった。
「胡桃はわざとここに案内してくれたんだよね? 僕が寝てばっかで気がめいってたから、少しは遊ばせてあげようって」




