第五百二十六話 空とりんごの皮④
「結局おまえ、私のこと……好きなの? それともなんとも思ってないの?」
と、言ってくる氷菓。
空はそんな彼女へと言う。
「嫌いっていう選択肢は入ってないんですね」
「おまえが私のことを嫌い……そんな選択肢はありえないわ。だって、私とおまえの仲だもの。なにか間違っているかしら?」
さすがというべきか、氷菓は偉い自信だ。
まぁ――。
「いや、間違ってないですよ。っていうか、さっきの質問……絶対に答えないといけない感じですか?」
「おまえ、さっきからわかり切った質問ばかりするわね。そんなの、私が答えるまでもないわよね?」
と、予想通りの氷菓。
きっと彼女は、答えるまで退くことはないに違いない。
ならば。
「なんとも思ってなくはないですよ。むしろ、どちらかというと好きよりですよ」
「っ」
と、なにやらピクンっと震える氷菓。
空はそんな彼女へと続ける。
「いつも一緒に活動したり、冗談言いあったり……一緒に居てとっても居心地がいいですからね。なんとも思っていないなんてわけが――」
空がそこまで言いかけたその時。
事件が起きた。
「お、おまえ――な、生意気なのよ! く、空のくせに生意気だわ!」
と突如、顔を真っ赤にして立ち上がる氷菓。
彼女がダッシュで部屋から出て行ってしまったのだ。
残されたのは――。
「もご……」
氷菓が立ち去る間際。
口にりんごをありったけ突っ込まれた空のみ。
これは――。
(意味が分からない……)




