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第五百二十四話 空とりんごの皮②
「おまえ、そろそろ私のものになりなさいな」
と、言ってくるのは氷菓だ。
彼女は空に対し、フォークで刺したリンゴを差し出しながら――。
「あーん」
などと言ってくる。
これと先の「私のもの」発言の関連は不明だ。
だがしかし。
「あ、あーん」
と、空は混乱した頭で口を開く。
すると、そこに放り込まれるのはリンゴ。
もぐもぐ。
空がリンゴを食べ終わると――。
「それで、どうかしら?」
と、言ってくるのは氷菓だ。
空はそんな彼女へと言う。
「どうって、りんごの話ですか? それだったら、甘くてとっても美味しかったで――」
「おまえ、ふざけているの?」
「…………」
どうやら、氷菓が期待した返事ではなかったに違ない。
だとするならば、彼女はいったい何を求めているのか。
と、空が考えたその時。
「今ので、おまえが私のものになったのか……そういうことよ」
氷菓はそんなエキセントリックな事を、空へと言ってくるのだった。




