第五百十六話 空は日本を襲った怪人について聞いてみる③
「ねぇ、時雨。あの怪人――怪人の王について、何か知ってる? なんだか、戦っている時に妙な感覚がしたんだ」
「妙な感覚……ですか?」
と、ひょこりと首をかしげる時雨。
空はそんな彼女へと言う。
「うん。なんだか身体全体の力が抜けるような、身体に重りをつけられたような感覚がしたんだ」
「それは……っ」
と、ぴくんと身体を揺らす時雨。
きっと、何か思い当たる節があるに違いない。
そんな彼女は、空へと言葉を続けてくる。
「たしかな効果と範囲はわかりません……けれど、あの怪人はおそらく異能を無効化する能力を持っています」
「異能を無効化って、それじゃあ――」
「いえ、兄さんが思っているほど絶望的ではありません……無効化能力の範囲は、かなり絞られています――一定の距離なのか、限られた対象のみなのか……いずれにしろ、複数人で挑めば、異能を使えるヒーローもいます」
では、どうして怪人の王に苦戦しているのか。
時雨の異能ならな、倒せなくはないに違いない。
と、空が考えたその時。
「あの怪人はとにかく固いんです……そして、素の身体能力が高い」
と、言ってくる時雨。
そんな彼女は、空へと言葉を続けてくる。
「わたしの異能はおろか、唯花さんの《グングニル》の直撃を受けても、まるで無傷……だからこそ、兄さんならって思ったんです」
「僕の力――レベルでブーストされた力なら、あの怪人にダメージを与えられる」
「はい……ですが、兄さんの話からすると」
「…………」
怪人の王は異能を無効化する。
それだけではない。
「怪人の王は……僕のレベルの概念そのものを無効化している」




