第五百十二話 空は死にかけてる間の説明をされてみる
時は時雨がやって来てから数十分後。
場所は変わらず、先の部屋。
現在、時雨がようやく泣き止んだ頃。
「落ち着いた?」
「いえ……すみません。怪我をして一番辛かったのは兄さんなのに……思わず怒ってしまいました」
と、しょんぼりしている時雨。
空はそんな彼女へと言う
「いや、あれだけ怒ってくれるほど心配してくれたんだよね?」
「そんなの当たり前じゃないですか……わたしは兄さんが居ないと!」
「だったら、すごい嬉しいよ」
それに、空としても時雨の気持ちはわかる。
空だって、もしも時雨が同じような怪我をしたら。
(ものすごく心配するけど……怒る、かも)
時雨は空の大切な妹だ。
もう二度と、そんな危険ことはしてほしくない。
そんなことを時雨にぶつけてしまうに違いない。
「でも兄さん……本当に気をつけてください」
と、言ってくるのは時雨だ。
彼女は空へと言葉を続けてくる。
「兄さんの怪我は致命傷――心臓や肺もぐちゃぐちゃだったんですよ」
「え……なんで僕生きてるの」
「…………」
と、ジトーと視線を向けてくる時雨。
なるほど、わかったら苦労しないというわけだ。
そして、空には時雨がここまで心配した理由がわかったのだった。




