第五百七話 胡桃は怪人の親玉と戦ってみる③
「無傷って……嘘、でしょ」
胡桃は全力で攻撃をした。
当然、空が倒せない相手を倒せるとは思ってはいなかった。
しかし、さすがにダメージくらいは与えられると思っていたのだ。
(せめて、空を連れて逃げる時間くらいはって……そう思ったのに)
と、胡桃がそんなことを考えたその時。
彼女めがけて、怪人がその大きな鎌を振り下ろしてくる。
「っ!」
と、胡桃は咄嗟に自らの前に盾を張る。
けれど。
怪人の鎌が胡桃の盾に触れた瞬間。
まるで脆いガラスの様に砕け散る盾。
「こんのっ!」
盾が壱枚割られたくらいで、諦めるわけにはいかない。
なぜならば。
(ここであたしがやられたら、空の命も危ない……守らないと、あたしが!)」
と、胡桃は次々に盾を張る。
盾が砕けても斬られても、その裏に薄く頑丈な盾を張り続ける。
そして――。
「……止まった」
怪人が鎌を振り下ろしてからおよそ壱秒。
胡桃が張った盾はおよそ三百。
能力の酷使の結果。
胡桃は激しい頭痛を覚えている。
だがそれでも。
(守、れた……)
気を抜くと、意識を失いそうになる。
しかし、それはダメだ。
(は、やく……にげな、いと)
と、胡桃は空を連れて逃げようとする。
ここで彼女は頭痛のせいで、とあることを失念していた事にきがつく。
それは――。
「…………」
と、再び鎌を振り上げる怪人。
そう、例え一度攻撃を防いだからといって。
例え胡桃が決死の力を振り絞ったからといって。
まだ怪人の攻撃は終わっていないのだ。




