第四百六十五話 空は魔王にやられてみる②
「魔眼 《貧者の右目》。俺が注視した場所に、触れているもの……もしくは自分を一瞬で移動できる能力だ。本来は暗殺につかう技能らしいが……まぁ、こういう使い方もできる」
と、言ってくるアルハザード。
なるほど、確かにそれなら説明がつく。
さきほど、アルハザードが突然移動した理由は後者。
空の肩に剣がいきなり刺さった理由は前者。
まだ他の使い方があるかは、わからない。
けれど、強力な技能ということは変わらない。
(おそらく、アルハザードさんと僕の元の身体能力は、そう変わらない)
なぜならば、空とアルハザードは共にレベル6。
にもかかわらず、ここまで差が出る要因は三つ。
一つは先ほども言った、空自身の疲労だ。
これはもはやどうすることもできない。
(あとは二つのジョブ――魔王と勇者の性質の差も痛い)
おそらく、魔王は単体でも最大限の力を出せるに違いない。
一方の空は、リーシャとの接触がなければ最大限の力は出せない。
そして最後の一つ。
それは単純に、保有する技能の差。
(中でも一番大きいのは、やっぱりジョブの違いか……逆に言えば、アルハザードさんのジョブさえどうにかできれば、なんとかなる)
となればやはり方法は一つだ。
それに成功さえすれば、空が勝てる可能性はまだある。
故に――。
「シャーリィ、今だ!」
空はそう声を上げるのだった。




