第四百五十八話 空と襲来③
「違う! そうじゃない! 僕が憧れたのは、英雄としてのあなただ!」
と、空はアルハザードへと言う。
すると彼女は空へと言ってくる。
「英雄としての俺? 勘違いしているようだな俺は――」
「勘違いなんかしていない! どんな動機で人助けをしていたのかは知らない! それでも、あなたは魔王の力に飲まれていない間は――正気の間は人助けをしていた!」
それは尊い行為だ。
そして、空はアルハザードのそんな行いに憧れたのだ。
断じて、世界を壊す魔王の力に憧れたわけではない。
「正気、正気ね」
と、つまらなそうなアルハザード。
彼女は空へと言ってくる。
「俺は今でも正気だよ」
「どこが……あなたは今、完全に――」
「俺は強さを求め、この魔王の力を手に入れた。レベルのおかげもあって、俺は最強の力を手にれた。でも、俺はそこで問題に気がついてしまった」
「問題?」
「あぁ……俺の力を全力で振るえる相手がいない。全力を出せば、敵は瞬時に消滅する……つまらない、張り合いがない」
アルハザードのその発言は、空にも心当たりはある。
けれど、それをつまらないと考えたことはない。
なんせ、敵が弱いということは、それだけ世界が平和ということだから。
そう、空は自分の力を楽しみたくて、強さを求めているわけではない。
ただ単純に、確実に守りたいから強さを求めたのだ。
アルハザードの考えが、元からそうだったのか。
はたまた、魔王の力のせいで歪んでしまったのかは、空にはわからない。
だがしかし。
「だから俺は世界を壊すことにした。俺という危機に抗うために、俺よりも強い何者かが現れるのに期待してな」
今のアルハザードを、止めなければならないことだけは確かだ。




