第四百五十二話 空は駆けつけてみる
時はヒュドラ出現からすぐ。
現在、空達はエクセリオン外壁へとやってきていた。
(さっきより距離が近くなったから当然だけど、なおさら大きく見えるな……今まで戦った魔物の比じゃない)
と、空がそんな事を考えていたその時。
「勇者様! 聖女様!」
駆けよってくる一人の兵士。
彼は空へと続けて言ってくる。
「き、巨大な魔物がエクセリオン中心部に! 兵士達では手がつけられず……勇者様のお力を、どうか貸していただけないでしょうか」
「大丈夫、そのつもりで僕達も来てる。というか、あの魔物はどうやって出現したの? もしも、召喚士みたいのが居るとしたら、そいつを倒さないと根本的な解決には――」
「それは大丈夫です、勇者様。兵士の中の一人が、巨大な魔物が出現する時の様子を見ていました。あの魔物は禁呪によって出現したものです……もっとも、禁呪を使うような輩を内部に侵入させていたことも問題ですが」
「えっと……禁呪?」
聞いたことが無い言葉だ。
と、空のそんな内心を把握したに違いない。
リーシャは空の胸をくいくいした後、空へと言ってくる。
「禁呪は膨大な魔力と、自らの命を生贄に魔物を召喚する魔法です!」
「なるほど、それで……でも、なんでその禁呪がエクセリオンの内部で」
エクセリオンの門は、多くの兵士が眼を光らせている。
よって、禁呪を使うような怪しい輩が、潜入するのは不可能に思う。
「おそらく、洗脳魔法を使ったんだと思います」
と、言ってくるのはリーシャだ。
彼女は空へと続けてくる。
「魔力の高い人間を捕え、洗脳……自然に振る舞わせ、エクセリオンに潜入させたのち――」
「タイミングを見計らって、内部から禁呪を発動させたってことか」
「はい……」
と、祈るように手を重ねるリーシャ。
きっと、犠牲になった人のことを考えているに違いない。
(リーシャの気持ちはよくわかる。捕まえた人を生贄に、さらにエクセリオンの人々を殺させようとするなんて、さすがに酷すぎる)
故に空はリーシャの身体を強く抱く。
そして、彼女へと言うのだった。
「生贄にされた人のためにも、ヒュドラに全力をぶつけたい。だからリーシャ、僕に力を貸して」




