第四百五十一話 空と予想外の魔物③
「あの魔物に心当たりがあるの?」
「はい。あれはおそらく、ヒュドラだと思います」
と、言ってくるのはリーシャ。
彼女はきゅっと、空に身を寄せ続けて言ってくる。
「文献にしか出てこないような、太古の魔物です」
「なんでそんな魔物がここに……しかも、エクセリオンのど真ん中に」
「わかりません。ですが、ヒュドラは現れる度に、確実に周辺の国を崩壊に導いたと言われています……」
「っ」
わかりきっていたことだが。
つまり、このままではエクセリオンはまずいということだ。
ならばすることは変わらない。
「リーシャ、僕達の方針は覚えてる?」
「方針、ですか? 方針は――っ! まさかクウ様、ヒュドラをわたし達だけで倒す気ですか!?」
と、すぐに空の考えを理解してくれるリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「なんであそこに急に現れたのか理由はわからないけど、放っておくわけにはいかない。それに兵士達に任せるにしても負担が大きいし、準備するまでにかなり時間がかかる」
「たしかに、わたし達ならすぐに向かえます……ですが、ヒュドラは伝説と言われるほどの魔物です! さすがのクウ様も戦えばかなりの消耗を――」
「わかってる。でも、このタイミングであれが出て来たってことは、敵の切り札なんじゃないかな?」
「つまり、あれを倒せば戦況はこちら側に大きく傾く……そういうことでしょうか?」
と、言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女へとうなずく。
ヒュドラは現れたばかりのせいか、まだ動き出してはいない。
けれど、あれが動きだせばその被害は確実に大きい。
故に空はリーシャへと言うのだった。
「この戦場は胡桃とシャーリィに任せよう。僕達はエクセリオンに戻って、ヒュドラを倒す……犠牲が出てしまう前に!」




