第四十五章 空とシャーリィの奴隷講座②
「それは愛だ!」
「あ、愛……?」
と、シャーリィの言葉に対し、ポカンとした様子の胡桃。
シャーリィはそんな胡桃に対し、さらに言葉を続ける。
「シャーリィはクーのことを愛してるんだ! クーにこの場でどんな命令をされても、シャーリィはすぐにそれに従う! こんなことクーは言わないけど……もし死ねって言われても、クーのためになるなら死ねる」
「な、なんでそこまでそいつに尽くせるのよ!」
「クーがシャーリィの命の恩人だからだ! クーはシャーリィが奴隷商に誘拐されそうになってるのを、助けてくれたんだ! だから、シャーリィの命はクーのものなんだ!」
それにしては日頃、空の言う事を聞かないシャーリィである。
もっとも、空としても今のままのシャーリィで居て欲しいので、いいのだが。
「そしてなにより重要なのは――」
と、シャーリィは立ち上がり、胡桃のもとまで歩いて行く。
そして、シャーリィは胡桃の前で立ち止まり、彼女にズビシと指さしながら言う。
「シャーリィはいつもどこでも、ずーっとクーのことばっかり考えてる!」
「!?」
「考えようとしなくても、勝手に考えちゃうんだ! これはシャーリィの心が、クーのものだから起きる生理現象なんだ!」
「つ、つまりどういうことよ!」
「簡単だ! クーのことが好きで好きでたまらなくなって……意識するんじゃなくて、自然に心がクーのものになれば――クーの恋の奴隷になればゲートを通れるんだ!」
「なっ!? じゃあなによ! あたしがこいつに恋愛感情抱かないと、いつまで経ってもゲートを通れないってこと!?」
「そうだ!」
と、そんなシャーリィの返事を聞いた胡桃。
彼女は「むぅ~」とうなりながら、ベッドの上で頭を抱えてしまっている。
空はそんな胡桃の様子を見て思う。
(これで胡桃との変な関係も終わりかな。プライドが高いうえ、僕のことが嫌いそうな胡桃が、強さだけのために僕とそんな関係になるわけないし)
まぁ、これである意味せいせいしたというやつだ。
胡桃との関係はリセット。
今後はお互いかかわることなく――。
「い、いいわ! あたしは妹のために強くならないといけないの……だから!」
と、胡桃は立ち上がり、シャーリィを押しのけ空の前へとやってくる。
そして、そのまま彼女は彼へと言ってくる。
「絶対にあんたを好きになってみせる! でも、それだけじゃ癪だから……あんたもあたしを好きになるようにさせてみせるんだから!」
「…………」
と、空が状況を理解できず呆然としていると。
ギィ~。
開く扉の音。
そこから顔を出したのは。
「廊下まで響いてましたよ……奴隷にした梓さんと、さっそく恋人プレイですか。引きます……変態の極みですね」
ジトーとした視線で睨んでくる時雨だった。




