第四百四十五話 空はどんどん倒してみる
時はあれから数分。
現在――。
「これで十二体……リーシャ、大丈夫?」
「わたしは大丈夫です!」
と、空にきゅっと抱き着きながら、言ってくるのはリーシャだ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「クウ様が全ての魔物を一撃で倒しているおかげで、負担は全然感じていません……それより、クウ様は大丈夫ですか? 常に全力で戦っているように見えますので」
「僕は全然大丈夫だよ、まだまだ余力があるしね」
それに、空はまったく全力を出していない。
リーシャによるブーストのおかげで、全力を出す必要がないのだ。
イメージ二割くらいの力で、強力な魔物を一撃で倒せている。
触れるだけで勇者を強化するリーシャ――その力は凄まじい。
と、空がそんなことを考えたその時。
「クウ様! 大量のゴブリンです!」
聞こえてくるリーシャの声。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「次々に沸いてきます! このままでは、取り囲まれてしまいます!」
「多分、周囲の小岩に隠れていたんだろうね。僕達が強力な魔物と戦って、疲弊したところで倒そうとして」
「そんな……ずるいです。それに仲間がやられるのを、黙って見ているなんて」
そうこうしている間にも、ゴブリン達はすっかり空達を取り囲んで来る。
そして、奴らは徐々にその距離を詰めてくる。
このままゴブリンに一斉に攻撃されれば、やられはしないが長期戦は必須だ。
なんせ、ゴブリンは未だに増え続けているのだから。
(リーシャの消耗はなるべく避けたい。リーシャの体力が切れれば、当然僕の戦闘能力も落ちる)
もしそうなってしまえば、助けられる兵士の数に直結する事態になってしまう。
であるならば。
「リーシャ、ちょっと揺れるけど我慢してね」
「クウ様? それはいったい――」
と、そんなリーシャの声。
空は彼女の声を最後まで聞く前に、腕を大きく振りかぶるのだった。




