第四百四十二話 空は飛んでみる
時はあれからすぐ。
場所は――。
「リーシャ、本当に大丈夫? サイクロプスまで最短距離だったから、ジャンプしちゃったけど」
「だ、大丈夫です! 戦場が真下に見えて少し怖いですけど、なんとか大丈夫です!」
と、ぷるぷるしているリーシャ。
そんな彼女は空の胸元に身を寄せてくると、ボソボソ続けて言ってくる。
「あ、あのクウ様……その、クウ様の手が腰に……あ、あとその……胸の鼓動が……うぅ」
「え、なにか言った?」
「な、なんでもありません! 一緒に頑張りましょう! クウ様!」
どうやらリーシャ。
やる気たっぷりの様子だ。
そにしても。
(やっぱりブーストされた勇者の力はすごいな。レベル補正もあってか、たった一回地面を蹴っただけなのに、人一人抱えたままこんなにジャンプ出来るなんて)
そんなこと考えている間にも、サイクロプスとの距離は縮まって来る。
故に空はリーシャへと言う。
「リーシャ! 着地と同時に反転、サイクロプスに頭に魔法を撃ちこむ! 使うのは聖天魔法じゃないけど――」
「わかりました! 力が増している分、普通の魔法でも反動に気をつければいいのですね?」
と、阿吽と言わんばかりに理解を示してくれるリーシャ。
空はそんな彼女に頷きつつ、右手に魔力を溜めるのだった。




