第四百三十八話 空は遊撃隊の方針を決めてみる④
「ですが、方針自体はとてもいいと思います!」
と、言ってくるのはリーシャだ。
空はそんな彼女へと言う。
「え、そうなの? てっきり僕はそれも反対なのかと――」
「わたしが反対していたのは、クウ様の考え方だけです! けれど、それはもうわかっていただけましたか?」
「うん……わかったよ」
たしかに、空一人で魔王軍と戦いという考えはナンセンスだった。
兵士達の気持ちを考えていなかった……という以外にも理由はある。
よく考えてみればわかることだが、一人では必ず漏れが出る。
誰一人犠牲を出したくないという空のエゴで、兵士達に戦わせない結果。
空が撃ち漏らした魔物が、街の人を襲えば意味がない。
というか最悪だ。
「あ、あのクウ様……ひょっとしてわたし、言い過ぎでしまいましたか?」
と言ってくるのは、おずおずした様子のリーシャ。
きっと、空が黙っていたせいで、落ち込んでいると思ったに違ない。
故に空はそんな彼女へと言う。
「大丈夫だよ、ちょっと考え事をしていただけ。リーシャのおかげで、わかったこともあったしね」
「わかったこと、ですか?」
「うん。戦う力と、戦う覚悟がある人達を頼らないで、戦いから遠ざけるのは違うってこと――僕が大切な人のために戦いたいように、きっとその人にだって理由はあるから」
「クウ様……尊いお方……」
と、パァっと輝きながらお祈りモードに入るリーシャ。
空としてはそんなに尊いことを言ったつもりはない。
(というか、リーシャから気がつかされたことを、そのまんま言っただけなんだけどな)
まぁそれはともかく。
と、空はリーシャへと言う。
「ところで、方針の件だけどリーシャも賛成でいい?」
「はい! 兵士達の負担なるべく避け、戦力を温存できる素晴らしい方針だと思います! 遊撃隊らしい働きができるかと!」
「うん、じゃあ――」
「クー! 大変だ!」
と、空の言葉を断ち切る様に聞こえてくるのは、シャーリィの声。
彼女は魔王軍の方を指さしながら、続けて言ってくるのだった。
「ついに動き出した! 戦いが始まったんだ!」




