第四百三十七話 空は遊撃隊の方針を決めてみる③
「優しいのはクウ様のいいところです。ですが、悪いところでもあります」
と、言ってくるのはリーシャだ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「たしかに、なるべく犠牲が出ないようにという考えは、とてもいいことです。でもだからといって、そこに居る兵士様達に頼らないのは違います!」
「いや、でも――」
「でもじゃありません!」
と、珍しくむっとしているリーシャ。
彼女は空の方に近づいて来ると、言葉をさらに続けてくる。
「兵士様達も覚悟をしてここに居るんです! 家族を守るため、恋人を守るため……各々の大切な人を守るために!」
覚悟をしている。
空はリーシャの言ったその言葉に、思い当たるところがあった。
それは今朝。
空達が出発する前に、偶然通りかかった兵舎でのことだ。
その中から、偶然兵士達の会話が聞こえて来たのだ。
『絶対に魔王軍を倒そう』
『家族とこの街に住む人達を、俺達の手で守ろう』
『なに今回も行けるさ。それに今回は勇者様がついてる』
兵士達の会話は、みんな前向きなものだった。
きっと、それこそが覚悟に違いない。
兵士達だって、魔王軍との戦いで自分が死ぬ可能性は考えているはず。
けれど、そのうえで戦おうとしているのだ。
それは目を逸らしているとかいった理由ではない。
理解し、考えているからこそだ。
(戦って死ぬのは当然怖いけど、そのせいで大切な人が死ぬのはもっと怖い……それは僕にも理解できる)
と、空がそんな事を考えていると。
「ですが、方針自体はとてもいいと思います!」
リーシャのそんな声が聞こえてくるのだった。




