第四百三十三話 空と朝
時は翌朝。
場所はエクセリオンの裏――やや離れた場所にある高台。
「お~! ここからだとエクセリオンが全部見える!」
と、聞こえてくるのはシャーリィの声だ。
空はそんな彼女が見ている方へと、視線を向ける。
すると見えてくるのは。
とても巨大な城壁だ。
エクセリオンは知っての通り、魔王軍との戦いの最前線。
故にエクセリオンという城下街は、巨大な壁を持っている。
エクセリオンの左右にそびえる巨大な山。
その間に立ちふさがるかのような、巨大な城壁を。
空達が居る位置からは、エクセリオンの城下街。
そして、巨大な城壁までもがしっかりと見えるのだ。
さてさて。
空達がこんな場所に居る理由は何故か。
それは――。
「もう! 遊撃隊だから、あたし達は少し離れた位置にいて欲しいっていうのはわかるわ! でも、いくらなんでもあれは何よ!」
と、聞こえてくる胡桃の声。
彼女はエクセリオンの城壁前を指さしながら、言葉を続ける。
「人間側の軍勢、ものすごい数じゃないのよ!」
「えっと、クルミ様。それの何がいけないのでしょうか?」
と、おずおずといった様子でを手をあげるリーシャ。
胡桃はそんな彼女へと言う。
「あたしは戦って強くなりたいの! あんなに人間側の軍が居たら、魔王軍なんて瞬殺じゃない!」
「それでしたら、きっと大丈夫だと思います!」
「何がよ! エクセリオン軍は数え切れないほど居るのに、魔王軍はえっと……エクセリオン軍の四分の一くらいしかいないじゃない!」
たしかに、胡桃の言う通りだ。
常識的に考えたら、この戦力差ではエクセリオン軍の完勝に違いない。
と、空がそんなことを考えたその時。
「で、ですから大丈夫です!」
と、リーシャが再び胡桃へと言うのだった。




