第四百三十話 空はようやく認識してみる②
「まさか……胡桃ってツンデレってやつだったりするのかな」
「シャーリィ知ってる!」
と、耳をぴこんっとさせてくるシャーリィ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「思ってることと反対のこと言う子だ! 胡桃は素直になれないんだ!」
「それにしても、胡桃はツンの部分が強すぎる気がするけど……」
先ほど胡桃からされたことがなければ、未だにツンデレなどとは思えない。
と、空はここで自分が致命的なミスを犯したことに気が付く。
「……っ」
ミスとは、先ほど胡桃からされたことを思い出してしまったことだ。
顔がどんどん赤くなっていくのがわかる。
(い、いい、いや……あ、あああ、焦るな。あれくらいのことなら、時雨が小さい頃に何回もされてる……た、たた、たいした問題じゃない)
スキンシップだ。
国によっては挨拶とも言える。
「クー、顔が真っ赤だ! ひょっとして、クーはツンデレが好きなのか?」
と、ややズレたことを言ってくるシャーリィ。
彼女はたたっと空へ近づいて来ると、そのまま続けてくる。
「クーがそういうの好きなら、シャーリィも頑張ってツンデレやる!」
「えっと、それってどういう――」
「シャーリィはクーのことが大好きなんだ! 勘違いしないで欲しい!」
「それ……ツンデレじゃない気がする」
「ツンデレだ! シャーリィは今日からツンデレになったんだ! これからはクーが大好きっていう気持ちを、すぐに出さない様に――あ、クーが好きって言っちゃった! これじゃあツンデレじゃない!」
と、しゅんとしている様子のシャーリィ。
彼女のツンデレの定義がいまいちわからない。
まぁ、それは置いておくとして。
胡桃とシャーリィに続けざまにここまで言われて、放っておくわけにはいかない。
もちろん、彼女達二人だけではない。
(リーシャと氷菓さんもだ)
空はその二人からも、胡桃やシャーリィに似たアプローチを受けていた。
あれがもしも、本当に二人と同じ意味を持っているのならば。
(いつまでもなぁなぁじゃダメ、だよね。ちゃんとよく考えて、それぞれに答えを返さないと、いくらなんでも悪すぎる)
だがしかし。
リーシャと氷菓の件が勘違いだったら恥ずかしすぎる。
と、ここで空はもしも勘違いだった時の二人の反応を想像してみる。
『え、わたしは別にクウさ――勇者様のことはそれほどでも……』
『は? どうして私がお前を好きにならないといけないのかしらぁ?』
以上、想像上のリーシャと氷菓だ。
もしも、この反応をリアルでされたら、空のハートは粉々だ。
(や、やっぱりもう少し様子見てからの方がいいのかな……で、でもこういうのチキンっていうんじゃ)
というか、そもそも答えを返すとしても、なんと切り出せばいいのか。
空がそんな事を考えたその時。
「クー! クー!」
と、言ってくるのはシャーリィだ。
彼女は尻尾をふりふり空へと続けてくるのだった。
「シャーリィはクーのことが好きだ! でも、返事は別にいいんだ!」




