第四十三話 空と二つの世界が交わる場所②
「な、なに……これ。本当に人間じゃ、ない?」
「? シャーリィはシャーリィだ! 狐娘族だ!」
と、聞こえてくるのは胡桃とシャーリィの声。
時は空が異世界『ファルネール』から戻って数分後。
現在――胡桃はシャーリィの耳をくいくいと触りながら、彼女へと言う。
「え、やだ……かわいい。本当に生えてる……え、かわいい」
「耳ばっかり触るな! くすぐったい!」
「もう少しだけ触らせなさいよね!」
「さっきからずっとそれだ! シャーリィの耳はクー専用なんだ!」
さて、このような状況になっている理由は簡単だ。
空がゲートくぐった後、異世界にしかないものを探していると。
『クー! クーのにおいがしたから、来ちゃったぞ!』
と、そんな台詞とともにシャーリィが飛びついてきたのだ。
そして、空はそれと同時に気が付いた。
狐娘って地球に存在しないよね。
結果が現在のこの状況。
耳をくいくいする奴隷と、耳をくいくいされる奴隷の図だ。
「それにしてもあんた……あたし以外にも奴隷を作ってたんだ」
と、聞こえてくるのは胡桃の声である。
彼女はシャーリィの狐耳をくいくいしながら、続けて言ってくる。
「この子っていう存在があったから、奴隷にするとゲートを通れるって知ってたわけね」
「そういうこと。だから、僕は下心があって奴隷になったら通れるとか言ったわけでは――」
「下心あるなしにかかわらず、女の子を奴隷にするのは変態なんだからね!」
「うぐっ……ん? いや、ちょっと待った! 奴隷になるって言ってきたのは、そっちだよね!? そういうこと言う方が変態だろ!」
「うっ……うるさいわね! あんた、人の揚げ足とって――」
「ちょっと待った!」
と、話に割り込んでくるのはシャーリィである。
彼女はわしゃわしゃっと手で胡桃の手を弾いた後、空へと言ってくる。
「クー! どういうことだ! クルミも奴隷なのか!? どうして奴隷が増えたんだ! シャーリィは聞いてない!」
「あーっと、それは――」
「力で屈服させられて、心も身体もよこせって要求されたの……」
と、泣き真似しながら言ってくる胡桃。
空はそんな彼女を手で制しつつ、シャーリィにことの経緯を語るのだった。




