第四百二十八話 空はせがまれてみる
時はバルコニー事件から数十分後。
場所は変わらずバルコニー。
ただし、今では空と胡桃以外の面子も集まっている。
さらにさらに、夜空には次々に花火が打ち上げられている。
だが、もはや誰もそれを見ていない
なぜならばバルコニーは現在、それどころではない大騒ぎ状態だからだ。
「シャーリィもやる! シャーリィもクルミがやったのやりたい!」
「だ、だめです! シャーリィ様! あれはそういう軽はずみな感じで、してはいけないものなんです!」
と、聞こえてくるのはシャーリィとリーシャの声。
リーシャはそんな彼女へと言う。
「それにわたしは、まだシャーリィ様と敵対したくありません!」
「? クルミは敵になったのか?」
「クルミ様は協定を破って、魔道に堕ちてしまいました……救うのはもう不可能かと」
「ちょっと、あんた! 変なこと言わないでよね!」
と、聞こえてくる胡桃の声。
彼女は頬を膨らませ、リーシャへと言う。
「魔道ってなによ! だいたい、あたしはそんな協定結んでないんだから! 早い者勝ちってやつよ!」
「違います! 恋愛は友情です! 同じ人を好きになった女の子同士は、まず友情を確かめ合わないとダメなんです! 暗黙の了解です!」
「あんた……それって『Aくんのこと好きだから、応援してくれるよね』っていう、女子特有の牽制のこと言ってる?」
「?」
と、ひょこりと首を傾げるリーシャ。
きっと彼女は胡桃がいったことを、いまいちわかっていないに違いない。
と、空がそんなことを考えていると。
くいくい。
くいくいくい。
ひかれる空の袖。
空はポケーっとしていた視線と意識をそちらに向ける。
するとそこに居たのは。
「クー、モテモテだ!」
そんな事を言ってくる、シャーリィだった。




