第四百二十六話 空は胡桃に……
「せっかくこのあたしと二人で、綺麗な景色を眺めてるんだから、そんな顔しないでよね!」
と、言ってくるのは胡桃だ。
彼女は空へと言葉を続けてくる。
「明日のこと、緊張してるの?」
「大丈夫、緊張はしてないよ」
「ふーん。じゃあ、なんでさっきは、あんなに難しい顔してたのよ?」
「ちょっと考えてたんだよ。明日の事について……僕達が絶対に、エクセリオンの人たちを守らないとって」
「それがプレッシャーになって、緊張してるとかじゃないの?」
「いや、違うよ」
これは断言できる。
むしろ、空は明日のことがあるからこそ、力が湧いてくるほどだ。
人々の期待に応え、人々のために戦い、人々を守る。
それは空の理想のヒーロー像だ。
為りたいものになれたのだ。
緊張などするはずがない。
「それはそうと。ひょっとして、胡桃は僕の緊張を解そうとしてくれたの?」
「な、なんであたしが、あんたなんかの緊張をどうこうしないといけないのよ!」
と、プンプンした様子で言ってくる胡桃。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「あたしは別にあんたのことなんて、好きでもなんでもなくもないんだからね! 勘違いされると迷惑だから、そういうのやめてよね!」
「あ、ははは……ごめん」
どうやら胡桃を怒らせてしまったようだ。
彼女はせっかく上機嫌で夜景を見ていたのに、本当に申し訳ない事をした。
と、空がそんなことを考えたその時。
「嘘」
胡桃は突然、空の手を握り言ってくるのだった。
「嘘よ、全部……あたしはあんたのことが好き」




