第四百二十三話 空と彼女達の戦い②
結論から言おう。
今回の勝負に勝ったのは――。
「わーい! シャーリィが勝った!」
尻尾をふりふり、耳をぴこぴこシャーリィだ。
彼女は嬉しそうに空へと言ってくる。
「クー! シャーリィ頑張った! クーのために頑張ったんだ!」
「う、うん……お疲れ様」
と、空は一応シャーリィの頭をなでなでする。
しかし。
(シャーリィ、どう考えても圧勝だったよね)
なぜならば、シャーリィは初手で景品を取ったのだ。
要するに、胡桃とリーシャの手番は回ってきていない。
「クー! クー!」
と、空の袖をくいくいしてくるリーシャ。
彼女はきらきらとした視線と共に、空へと言ってくる。
「景品! シャーリィは今度、クーに毛づくろいしてもらいたい!」
「尻尾のだよね? 何をすればいいのかな?」
「両手を使って、尻尾をす~ってやるんだ!」
「す、す~?」
「そうだ! す~だ! ……あ、シャーリィいいこと思いついた!」
と、尻尾をぴこんと立てるシャーリィ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「マリィとソフィアの尻尾も毛づくろいしてほしい! シャーリィだけやってもらったら、きっと不公平だ!」
「…………」
シャーリィはきっと気配りの出来るいい子だ。
しかし、今回ばかりは完全に裏目に出ている。
幼女と元魔王の尻尾の毛づくろいとか。
どう考えても不穏でしかない。
と、空がそんなことを考えていると。
「うぅ……負けてしまいました。申し訳ありません、クウ様」
「あ、あたしが言いだしたのに……あたしが最初に言いだしたのに!」
言ってくるのはリーシャと胡桃だ。
彼女達はかたや落ち込み、かたや膨れ面。
どうみても納得していない。
そして、シャーリィもそれに気が付いたに違いない。
彼女は胡桃とリーシャへと言う。
「クルミ! リーシャ! やっぱりシャーリィ、みんなで毛づくろいしてもらいたい!」
「は、はぁ?」
「えっと、どういうこと……でしょうか?」
「シャーリィは尻尾! クルミとリーシャは、髪の毛! みんな一緒に毛づくろいだ! シャーリィは仲間はずれが嫌いなんだ!」
「あ、あんた……」
「し、シャーリィ様……なんて尊い」
やはり、空は間違っていなかった。
シャーリィは気配りのできるいい子だ。
それ故に、またしても大惨事が発生しようとしている。
(これ、僕のハードルどんどんあがってるよね……っていうか、もはや手の数が足りないきがするんだけど、気のせいかな?)




