第四百二十二話 空と彼女達の戦い
時はあれから数分後。
場所は射的の屋台の前。
「どうしてこうなった」
空は射的の屋台の前に立ち、呆然とその光景を見ていた。
さて、その光景とは――。
「もう一度確認よ! ルールは簡単、一番最初に景品を取れた人が勝ちなんだからね!」
と、説明口調の胡桃。
彼女は、人差し指を立てながら続ける。
「優勝賞品は、空になんでもいう事を聞かせる権……これでいいわね?」
「あ、あの! 一つだけ質問があります!」
と、手をあげるのはリーシャだ。
彼女は胡桃へと言う。
「なんでも、とは……その、どこまでいいんでしょうか!」
「あんたばかじゃないの? なんでもなんだから、どこまででもいいに決まってるんだからね!」
「ど、どこまででもいい……は、はぅ」
と、唐突に頬を真っ赤に染めるリーシャ。
彼女はひとしきりわたわたした後、銃にせっせとコルクを詰め始める。
どうやら、今の一言でよりいっそうやる気になったに違いない。
とまぁ、空としてはここまでは予定調和だ。
胡桃とリーシャが暴走するのは、さして珍しくない。
問題は。
「優勝したらクーに尻尾の毛づくろいしてもらう!」
尻尾をふりふりしているシャーリィだ。
尻尾の毛づくろいが何か不明だが、とんでもなく不穏な気配がする。
と、空がそんな事を考えていると。
「っていうか、なんであんたも参戦してるのよ!」
シャーリィへとツッコミを入れる胡桃。
シャーリィはそんな彼女へと、尻尾をふりふり言う。
「? クーになんでもしてもらえるからだ!」
「いや、そうじゃなくて! この勝負は、あたしとリーシャの一騎打ちなんだからね!」
「?」
ひょこりと首を傾げているシャーリィ。
きっと彼女はお祭りだから、みんなで遊んでいると思っているに違いない。
というか。
(どうしてお祭りなのに勝負してるんだろう……いや、そもそももはやお菓子作るのとか、関係なくなってる気がするんだけど)
きっとこれは言わない方がいい。
もし言えば、確実に胡桃がわーわー言ってくる。
「…………」
空は静観を決めるのだった。




