第四百十九話 空とお菓子②
「だ、だったら勝負よ! 勝負しなさい!」
と、むぅっとした胡桃の声。
リーシャはそんな彼女へと言う。
「勝負……受けて立ちます! クウ様のことだけは、引き下がるわけにはいかないんです!」
「へぇ、いい度胸じゃない!」
「ま、負けられない戦いです!」
胡桃はともかく、リーシャもすっかりやる気だ。
ここで、空はふと思う。
(あれ、そもそもこれ……なんの話していたんだっけ)
そうだ。
空が作って欲しいお菓子の話をしていたのだ。
胡桃リーシャ。
二人が何で勝負するのかは、わからない。
けれど、今日はせっかくのお祭り。
そんなことはしない方がいいに違いない。
と、空はそんなことを考えた後、二人へと言う。
「あ、あのさ……お菓子作りなら、二人で協力して作ったらいいんじゃ――」
「あんたバカじゃないの!? これは戦いなのよ!」
「そうです! これはクルミ様との一騎打ちです!」
と、言ってくる胡桃とリーシャ。
どうやら二人は引く気はないに違いない。
空がそんなことを考えていると。
「それで、クウ様が作って欲しいお菓子はなんですか?」
ひょこりと、首を傾げてくるリーシャ。
空は半ば諦めモードで、そんな彼女へと言う。
「じ、じゃあクッキーで……」
「わかりました。では、この勝負で勝った方が――」
「空にクッキーを作る」
と、リーシャに続きこくりと頷く胡桃。
空はそんな二人の声を聞きながら、盛大にため息をつくのだった。




