第四百十二話 空はふと気がついてみる②
「クウ様と一緒に出掛けること自体が用事です!」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「わたしはクウ様とおでかけ出来るだけで、とても幸せです」
「…………」
「こうしてお話しているだけで、なんだかとても心が温かくなるんです」
ぱぁっと輝くようにお祈りしているリーシャ。
ようするに、空は何か目的があって誘われたわけではないようだ。
しかし。
(明日はみんなの命にかかわる戦いがある日だ。僕とこうしているだけで、リーシャの緊張が取れるなら、いくらでも付き合うけどね)
と、空がそんなことを考えたその時。
リーシャが空へと言ってくる。
「あ、でも……その……」
「いいよ、言ってみて」
「はい……今日の夜に、エクセリオンでお祭りがやるんです」
「え、そうなの?」
「明日が戦いの日――そう決まってから、急遽お祭りをやることになったんです」
最後の晩餐。
というと、ちょっとくらいイメージがするが。
ニュアンスはそんな感じに違いない。
先も言った通り、明日は皆の命がかかっている。
その前に楽しんでおきたい――そう考えるのは、人として当たり前だ。
「あの……クウ様。そのお祭りに一緒に行ってはくれませんか?」
と、なにやら頬を染めているリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「そんなお祭りがあるなら、もちろん行くよ!」
「ほ、本当ですか!」
「うん。シャーリィと胡桃も誘っておくね!」
「…………」
「ところで、そのお祭りって何時からやるの?」
「…………」
「えっと、リーシャ?」
「…………」
おかしい。
リーシャが死人のような瞳で、空を見てくる。
しかも何も言ってくれない。
この後。
リーシャが普段の彼女に戻るまで、数十分かかるのだった。




