第四百十一話 空はふと気がついてみる
アルハザードについて、あぁでもないこうでもないと話すこと数分。
場所は変わらず喫茶店。
「とりあえず、いろいろ考えてみて思ったんだけどさ。アルハザードさんが魔王かもしれないってことは、他の人には言わない方がいいかもしれない」
「やはり、クウ様もそう思いますか……」
と、元気のない様子のリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「うん。少なくとも、今日明日は絶対に言わない方がいい。人間の英雄が魔王かも……なんて話は、確実に士気にかかわってくるしね」
理由は他にもある。
それは――。
(そもそも、本当にアルハザードさんが魔王かわからないしね)
空とリーシャが話していたことは、当然だが推測だ。
的外れの可能性も充分にある。
士気がどうのをおいておいたとしても、そんな不確かな情報を広めるのは、確実によくない――アルハザードにとっても、他の人間にとってもだ。
(それに、やっぱり僕はアルハザードさんを信じたい)
空の中のアルハザードは、依然として英雄だ。
力のために危険を顧みないなどと、どうしても信じたくはない。
と、空はここでとある事に気が付く。
「あれ……すごく話が変わるんだけどさ。リーシャってそもそも、今日はなんの用事があったの?」
「わたしの用事、ですか?」
と、不思議そうに首を傾げるリーシャ。
彼女は当然といった様子で、空へと言ってくるのだった。
「クウ様と一緒に出掛けること自体が用事です!」




