第四百十話 空とリーシャの現魔王③
あれからも、空とリーシャは現魔王について話し合った。
結果、やはり結論は。
「うーん……考えれば考えるほど、アルハザードさんが怪しいか」
「はい。あと他にも考えられる人は居るには居るのですが……確実にありえないので」
と、、気になることを言うリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「可能性は全部つぶしておきたいから、言ってみてよ」
「ですが……その」
「大丈夫だよ。仮に的外れでも、僕は笑ったりしないから」
「クウ様……です」
「え?」
「一人で魔王を迅速に倒せる強さ。そして、強さへと渇望――クウ様の像にも当てはまります」
「あーたしかに」
言われてみれば、その通りだ。
と、空がうんうん頷いていると。
「あ、あの!」
と、急に立ち上がって来るリーシャ。
彼女は真剣な表情で、空へと言ってくる。
「あくまで当てはまるだけで、わたしはクウ様がそんな――」
「あはは、わかってるって。僕が魔王の可能性はほぼないから、リーシャもこれまで口にしなかったんでしょ?」
「はい……クウ様が魔王だと、いろいろと矛盾点がありますので」
リーシャが言う矛盾点とは、空がこの世界にやってきた時期。
そして、そもそもこの世界の住人ではないということ。
などなど、あげればきりがないことだ。
それはそうと。
現状でこう思うのは微妙かもしないが……。
(アルハザードさんと並ぶくらい強い……リーシャにそう思われてるのは、けっこう嬉しいな。本当のアルハザードさんがどうあれ――英雄アルハザードは僕の憧れだしね)
と、空がそんなことを考えていたその時。
再びリーシャの声が聞こえて来る。
「それに、わたしはクウ様を信じています!」
「信じるって、なにを?」
「クウ様は魔王の力を求めたりしないと……そして、クウ様がもし魔王の力を手にれても、絶対に暴走なんてしないって……そう信じています!」
ふんす。
っと、鼻息荒いリーシャ。
(なんか持ち上げられすぎな気がするんだけどな……)
けれど、ここまで期待してくれている以上、その期待を裏切れはしない。
空はそんなことを考えたのち、リーシャの頭を撫でるのだった。




