第四百九話 空とリーシャの現魔王②
「それで、不審な点っていうのは?」
「不審な点というか、少し気になる点なのですが」
と、おずおずした様子のリーシャ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「実はアルハザード様のジョブが、十年前からおかしいんです」
「そういえば、アルハザードさんのジョブって……」
「はい。しっかりと表示されないという報告が上がっています」
「十年前よりさらに前は、ちゃんと表示されたっていう記録はあるの?」
空の質問に対し、リーシャは無言で頷く。
きっと彼女は、その答えに確信があるに違いない。
たしかに、状況だけ見ればアルハザードが現魔王でもおかしくはない。
本人が魔王であることに気がついていないというならば、英雄としての側面を未だ持っていることも納得がいく。
(人助けしながら、人を滅ぼそうとしている可能性があるのか)
けれど、空はやはりアルハザードが現魔王だとは信じたくなかった。
彼女は空とシャーリィの恩人なのだから。
そしてなにより。
(ソフィアは力を求めた人間に、強引に魔王の力を奪われたって言ってた)
ソフィアだって、魔王の力は奪われたくなかったはず。
であるなら、魔王の力を強引に奪う危険性は相手に伝えたに違いないのだ。
ようするに、空が信じたくないのは――。
アルハザードがそんな危険を冒してまで、力を求める人物だということ。




