第四百八話 空とリーシャの現魔王
「一人だけ、心当たりがあります」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「人を疑うのはよくないことなのですが……」
「大事なことだがら、気にせず言ってみて。ひょっとしたら、それによって何か対策が出来るかもしれないし」
「では……率直に言わせていただきます――わたしは魔王の正体はアルハザード様だと思っています」
「え」
英雄アルハザード。
空とシャーリィを助けてくれた人物。
この世界においては空の憧れといっても過言ではない。
リーシャはどうしてそんな彼が、魔王だと思ったのか。
彼女は空が考えている間にも、言葉を続けてくる。
「およそ十年前に、魔王が倒され代替わりしていたことを、わたし達は誰も知りませんでした。それはつまり、少人数により迅速に先代魔王が倒されたということだと思います」
「アルハザードさんなら、強いから単独で……かつ迅速に魔王を倒せるっていうことかな?」
「はい。それにあの方には不審な点があります」
「不審な点なんてあったかな? 困っている人がいれば、どこへでも駆けつけそうな性格していたけど」
「ソフィア様の話だと、現魔王は暴走しているせいで二重人格なのですよね? だったら、アルハザード様は魔王である時の記憶がない……そう考えることもできます」
「…………」
たしかに、そう言われるとそんな気もする。
故に空はリーシャへと言うのだった。
「それで、不審な点っていうのは?」




