第四百七話 空とリーシャと元魔王②
「ソフィア様は今、どこで暮らしているのですか? ま、まさかその……クウ様の世界で――クウ様の世界で一緒にということは」
と、もじもじとした様子で言ってくるリーシャ。
空はそんな彼女へと言う。
「あはは、まさか。ソフィアは今、シャーリィの家で暮らしてるよ。シャーリィの話だと、いつもマリィと仲良く遊んでるみたいだよ」
「マリィ様、ですか?」
「うん、シャーリィの妹なんだ。そういえば、マリィの紹介はしてなかったね」
「はい。シャーリィ様から話は聞いていたのですが、お名前はまだです! かわいい名前……きっとシャーリィ様に似た狐さんなんですね!」
きらきらと瞳を輝かせているリーシャ。
鋭い――マリィは悪い意味でもシャーリィにそっくりだ。
と、空はここでリーシャに聞きたいことがあるのを思い出す。
それは。
「会議でも少し議題になったけど、リーシャはソフィアの扱いと、現魔王の正体についてどう思う?」
「正直、前者についてはわかりません」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は難しそうな顔で続けてくる。
「魔王が人間に対し、より苛烈になったのは十数年前からです。言い方はおかしいですが、それ以前は大人しかったんです」
「じゃあ……」
「はい。現魔王が暴走しているのが原因だと思います……もちろん人間からすれば、ソフィア様も敵ではあるのですが、どれほどの罪があるのかがわかりません」
たしかに。
極論、ソフィアは人間に対し何もしていない可能性すらある。
そんな彼女を裁くのはおかしな話だ――そして、これは王も同意見のようだ。
「後者についてですが……」
と、重そうに口を開くリーシャ。
彼女は空へと続けてくるのだった。
「一人だけ、心当たりがあります」




