第三百九十八話 空は信じてみる②
「ねぇ、ソフィアは今の魔王を止めることはできないの?」
「ふん、そんなの無理なのじゃ!」
と、偉そうな様子のソフィア。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「よく聞くのじゃ! さっきも言った通り、魔王の力は我にはもうない! しかも、魔王の力が奪われるときに、我本来の力も全部持っていかれたのじゃ! 今の我はただの狐じゃ!」
「さっきから気になってたんだけど、魔王の力ってなんなの? 特別な武器みたいな――」
「違うのじゃ! 魔王の力とは特殊なジョブじゃ!」
「特殊なジョブ?」
「そうじゃ! 強者のみが手に入れられる最強のジョブ……それが魔王じゃ! ジョブ 《魔王》は代々とある方法で継承されきたのじゃ!」
と、尻尾を自慢げに振るソフィア。
彼女の説明をまとめるとこんな感じだ。
魔王の力は、ある種の呪いの様なものらしい。
『魔王になる』という呪いにかかる条件は、その呪いを保持している者を倒すこと。
すなわち。
魔王になる条件は、魔王を倒すこと。
故に、現魔王に倒されたソフィアは、魔王でなくなってしまったのだ。
「そして、魔王になれるのは獣人族か魔人族だけなのじゃ!」
と、続けてくるソフィア。
彼女はわなわな震えながらさらに言ってくる。
「なのに、なのにあやつは……あの愚か者の人間は!」
「ちょっと待って。いま人間って言った? 今の魔王は人間なの?」
「そうじゃ! 十年前、我を倒したのは人間じゃ! けれど、所詮は人間……本当ならば魔王の力は譲渡されないはずだったのじゃ! じゃが、あやつは力を求めて、強引に魔王の力を我から奪い取ったのじゃ!」
「それで……どうなったの?」
「見てのとおりじゃ! 我は無理矢理力を奪われた後遺症で、魔王以外の力も失っただけでなく、九本あった尻尾も一本に……毛並みも少し悪くなった気がするのじゃ!」
「…………」
ソフィアの毛並みはいいように思う。
というか、空が聞きたいのはそうではない。
故に、空はソフィアへと言うのだった。
「そうじゃなくて、魔王の力を手にした人間は、今どうなっているの? っていうか、それは誰?」




