第三百九十六話 空はソフィアを安心させてみる③
片手剣三本。
大剣一本。
魔法 《ファイア》四回。
空が遠距離から、オーガを倒すのに使った武器、及び魔法だ。
現在、オーガはすっかり消し炭になっている。
空がオーガをそうするまでにかかった時間は、体感十秒だ。
だがしかし、空は魔眼を発動していた。
そのため、空にとっては十秒でも――。
「す、すごいのじゃ! あのオーガは強化された個体じゃ! それを一秒も経たずに倒すのはすごいのじゃ!」
と、そんなソフィアの言う通りなのだ。
彼女は空の手をぶんぶん振りながら、続けて言ってくる。
「すごいのじゃ! 我はうぬを見直したのじゃ! くくく……どうじゃ、我が力を取り戻した暁には、我のものになる気はないか?」
「それはだめだ!」
と、言ってくるシャーリィ。
彼女は尻尾をピンっと立て、ソフィアへと言う。
「クーは誰の物でもないんだ!」
「む、うるさい狐め! うぬは少し黙っているのじゃ!」
「ソフィアだって狐だ! しかも新米狐だ! クーの最初の奴隷はシャーリィだ! ソフィアは奴隷ランクが下なんだ!」
「ど、奴隷じゃと!? 我は奴隷なんかではないのじゃ!」
「そうだ! ソフィアの奴隷ランクは下だ! 助けられたのに、お礼も言えない狐はダメな狐なんだ!」
「くっ……生意気なやつめ! 我が本調子ならば、うぬなど一瞬で焦がし狐にしているものを……じゃが、そうじゃな……お礼、お礼か」
と、空の方へ視線を向けてくるソフィア。
彼女はそのまま、空へと言ってくる。
「な、なんじゃ……なんというか、その……た、助かったのじゃ。それと……さっきはその……と、取り乱して悪かったのじゃ」
ソフィアのその姿は、時雨が小さい時の雰囲気に似ていた。
時雨と喧嘩したあと、もじもじ謝って来る様子にそっくりだ。
だからに違ない。
空は思わず、ソフィアの頭に手を置く。
そして、なでなでをしてしまう。
すると。
「ふ、ふぇ……」
と、尻尾をぶんぶん振り始めるソフィア。
けれど、彼女はすぐさま。
「はっ――な、なにをしているのじゃうぬは! この無礼者め! 我は魔王じゃ! 魔王の頭を撫でるなど、いったい何を考えているのじゃ!」
そんなことを言ってくるのだった。
なお、その間も尻尾は常に振られていた。




