第三百九十話 空と行き倒れ狐
「クー! 狐だ! 狐が倒れてる!」
と、言ってくるのはシャーリィだ。
空が彼女の指さす方を見てみると、そこにいたのは――。
銀色の長く美しい髪。同じく銀色のモフモフとした狐尻尾と狐耳。
子供な体型ながらも、大人っぽい黒いドレスを纏った少女だった。
彼女は地面にバタリと倒れたまま、まったく動かない。
こうまで動かないと、死んで居る可能性もある。
なんにせよ、放置しておけるわけがない。
「きみ、大丈夫!?」
空は銀色狐へかけよると、その身体に手をやる。
すると。
(身体はまだ暖かい……息もしているみたいだし、死んでいるわけじゃないか)
けれど、安心していい状況ではない。
倒れている原因を探さなければならない。
もしも、怪我や病気が原因ならば、依然として彼女の危機は続いているのだから。
と、空がそこまで考えたその時。
「クー! 大丈夫なのか!?」
と、言ってくるシャーリィ。
空はそんな彼女へと言う。
「とりあえず死んではいないみたいだけど、早くなんとかしてあげな――」
「うぅ……」
と、空の言葉を遮って聞こえてくるのは、銀色狐の声である。
彼女はピクピクと震えながら、空へと言ってくるのだった。
「お、お腹が……お腹が減った……の、じゃ」




