第三十九話 空と奴隷宣言②
「あんた、《道具箱》の他にも異能を一つ……いえ、二つくらい隠し持ってるでしょ」
と、梓はかなり疑わしそうな視線を、空へと向けてくる。
空はそんな彼女へと言う。
「い、いや持ってないって! 異能を二つ以上もっているなんて、実際そんな人間が居たら大々的なニュースに――」
「じゃあ、さっきのはなんなのよ! 破壊もされず、どんな衝撃も通さない《イージス》の上からあたしにダメージ与えたり……しかも、あんた手のひらから炎だしたわよね?」
「うぐっ」
「教えなさいよ!」
「…………」
「黙ってないで……いいからっ!」
と、梓は空の首根っこを掴んでくる。
彼女はそのまま、彼の頭をガクガクさせてきながら言ってくる。
「お・し・え・な・さ・い・よ!」
「わ、ちょっ――」
「あんたの戦闘記録映像を見たわ。どう見ても雑魚だったし、手加減してる様子もなかった……身体能力そのものも今日とは全くの別人だったんだから!」
「うげっ、い、息……でき……」
「ワーストだったあんたが、いきなり序列十位のあたしに勝つ力を手にいれた! あんたは否定してるけど、異能を何個も手に入れるという方法で強くなったのは明らか!」
「げほっ――」
やばい、死ぬ。
空が天国の入り口を見始めたその時、梓は再び言ってくる。
「あたしは強くならないといけない理由があるの! 教えなさい! あんたが短期間で強くなった理由……お願いだから、教えて」
「うっ……あ、む、無理……」
空は首絞めガクガクのせいで、正常な判断ができなかった。
故に彼は思わず梓へと言ってしまう。
「い、異世界に行くには……ぼ、僕か……僕の物にならないと……」
「異世界! そこに行けば強くなれるの!? だったらなるわ! 強くなれるなら、あたしはあんたの物になる! どうすればあんたの物になれるのよ!」
「げほっ……ごほ……ど、奴隷……うぐ」
「ど、奴隷!? あ、あんた……あたしに奴隷になれって言ってるの!?」
(あ、もうダメだ……意識が遠のいてきた)
最後に時雨の手料理が食べたかった。
空がそんなことを考えるのと。
「い、いいわ! だ、だったら……っ! あたしをあんたの奴隷にしなさいよね!」
梓のこんな声が聞こえてくるのは。
「心も身体もす、好きにしなさいよ! なんでもするわ。だから、日向空……あたしをあんたの奴隷にしなさい! あたしに強さをよこしなさい!」
ほぼ同時だった。




