第三百八十九話 空と行き倒れ狐
時はシャーリィの家にお泊りにしてから数日後。
場所はかつて空が窮地に陥ったダンジョンの傍。
「よし、今日はそろそろ帰ろうかな」
「え、まだお昼だ!」
と、言ってくるのはシャーリィである。
空はそんな彼女へと言う。
「うん……だけど、今日は胡桃と予定があるんだよね。なんだか、本当は誘いたくなかったけど、僕しか誘う人が居ないから、仕方なく誘ってくれたらしいんだ」
「だったらシャーリィも行く!」
「でも――」
「時雨が言ってた! 変装すればバレないかもしれないって! シャーリィ変装する! それで、クーと一緒にお出かけする!」
「うーん……大丈夫、なのかな?」
胡桃は、空を誘うのは仕方なくといった様子だった。
つまり、空と二人きりで行動するのは不本意に違いない。
(今日はお昼から水族館に行って、夜に伝えたいことがあるって言われたけど……二人きりよりシャーリィが居た方がいいよね!)
問題はバレるかどうかだ。
けれど、最近のシャーリィは色々学習してきている。
例えば日本には怪人という危険な存在がいること。
そして、シャーリィは一見すると怪人に見えること。
そしてそして、自らの存在が珍しいということ。
(今のシャーリィなら勝手な行動はしないだろうし。時雨が変装どうの言うってことは、心のなかで安全だと判断してるに違いない)
であるならば。
と、空はシャーリィへと言う。
「じゃあ、一緒に行こうか? 魚がたくさんいる場所なんだけど、シャーリィは魚に興味ある?」
「魚! シャーリィは魚が好きなんだ! マリィと一緒にいつもたくさん食べてる!」
「…………」
シャーリィが興味あるのは食べる方だった。
と、空がそんなことを考えたその時。
「クー! 狐だ! 狐が倒れてる!」
シャーリィのそんな声が聞こえてくるのだった。




