第三百八十三話 時雨は歓迎してみる②
(妹の話題……そういう共通した話題なら、話しやすいかもですかね?)
と、そんなことを考える時雨。
彼女は部屋の隅で借りてきた猫のようになっている、唯花へと話しかける。
「唯花さん、お話が」
「は――え……あ、はい」
唯花はやはりカチコチだ。
胡桃や空と話している時とは、まるで別人のようだ。
けれど、時雨は気にせず彼女へと言葉を続ける。
「わたしが空の妹なのは知っていますね?」
すると、コクリとうなずく唯花。
時雨はそんな彼女へと、さらに言葉を続ける。
「わたしは兄さんのことが大好きです。頼りないところもありますし、勝手に暴走するときもありますけど……家族としてとても大切に思っています――唯花さんは、胡桃さんをどう思っていますか?」
「私も……姉さんが好き。私に優しくしてくれて……私のことを助けに来てくれて……鬱陶しいくらいに、私に注意を払ってくれるから」
「最後のはわかりますよ。兄や姉は、妹に対して鬱陶しいくらいに心配してきますからね……でも」
「心配されると……嬉しい」
と、ようやく笑顔を見せてくれる唯花。
これは仲良くなるキッカケを作れたに違いない。
(畳みかけるなら今! わたしの直感が、そう叫んでいます!)




