第三百八十二話 時雨は歓迎してみる
時は夜。
場所はヒーロー養成学校、時雨の部屋。
「お邪魔、します……」
と、言ってくるのは唯花である。
時雨はそんな彼女へと言う。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。テストや歓迎会で疲れたでしょう? ゆっくりしてください――今日から、ここは唯花さんの部屋でもあるんですから」
「疲れては……ない、けど」
「けどなんですか?」
「な、なんでも……ない」
と、唯花はカチコチ歩き出すと、部屋の隅っこにひょこりと座る。
時雨はそんな彼女を見て思う。
(薄々思っていましたけど……これはコミュニケーション能力が不足していますね)
というより、長年人間と接してこなかったせいで、こうなってしまったに違いない。
現状、唯花がまともに話せるのは二人とみていい。
(歓迎会の時も、胡桃さんとばかり話してましたしね……あと、何故か兄さんとも)
けれど、このままでいいわけがない。
なんせ、唯花はもう学校の生徒なのだから。
(それに、わたしとしても同居人とは仲良くしたいですしね……同じ妹ならなおさら)
と、そこで時雨はとあることにきがつく。
それは――。
(妹の話題……そういう共通した話題なら、話しやすいかもですかね?)
時雨はこくこくと頷いたのち、唯花へと話しかけるのだった。




