第三百七十四話 空と狐のお泊り会
「クー!」
と、ゲートをくぐった直後に聞こえてくるのは、シャーリィの声である。
彼女はたたっとかけてくると、空に飛びついてくる。
そして、そんな彼女は尻尾をふりふり、空へと言ってくる。
「クー! クー! 今日がなんの日かわかるか!?」
「うん、わかってるよ」
「シャーリィもわかってる! 今日は特別な日なんだ!」
と、テンション全開といった様子のシャーリィ。
彼女がこうなっている理由は簡単だ。
今日、空はシャーリィの家に泊まるのだ。
(なんだかんだ引き延ばしになってて、悪いなって思ってたんだけど……うん、ようやく時間を作れてよかったかな)
しかし、気になることもある。
それは――。
「昨日誘われて、今日の今日でいきなり泊まり行くって決めちゃったけど、本当にいいの?」
「?」
と、ひょこりと首を傾げているシャーリィ。
空はそんな彼女へと言う。
「ほら、お母さんに迷惑じゃないかなって」
「大丈夫だ! 今日は母さん留守だから問題ないんだ! それにクーを誘えばいいって、そう言いだしたのは母さんなんだ!」
「…………」
シャーリィが以前、狐娘族は人間が嫌いみたいなことを言っていた気がする。
その割にはシャーリィのお母さん、ノリノリである。
(そういえば、僕は大丈夫とかも以前言ってたけど、それでかな? 種族的な関係に目を瞑るくらい、僕の好感度あげるとか……シャーリィはどんな話してるんだろう)
あまり盛った話だと困る。
空は一人、そんなことを考えるのだった。




