第三百七十三話 空はノインの件を落着させてみる
時はあれから数十分後。
場所は協会から学校へと向かう帰り道。
(ノインの件、上手くいきそうでよかったな)
いい返事はもらえないと思っていただけに、今回の件は意外だった。
もっとも、その場合はもらえるまで粘るつもりだったが。
(意外といえば、まさかノインの学校での扱いの案が、あんなことになるなんて……)
と、空が思い出すのは先の一連の会話。
それを簡潔にまとめると、こんな感じである。
ノインは転校生として、時雨と同じクラスに入学することになる。
さらに、寮も時雨と同室のおまけつきだ。
これにより、初老の男性が言っていた男女同室問題を、無事にクリアしたわけだ。
他にも細かいことは多々ある。
すべてを上げるときりがないので、最後に大きなことを一つ。
彼女の首には発信機つきのチョーカーが付けられることになった。
そのチョーカーがあれば、ノインの居場所が瞬時にわかる。
なので、もしもの時に空や他のヒーローが駆け付けやすくなるのだ。
しかも、そのチョーカーは自由に外せない特注品らしい。
(セキュリティがすごいのは認めるけど……なんだかちょっと可哀想だよね。でも、しかたないのかな)
向こうも最大限譲歩してくれたのだ。
こちらも譲歩するところは、するしかない。
しかし。
(ノインが安全なのは、日頃の生活の中ですぐにわかるはず)
そうすれば、チョーカーなど必要ないことも、同時にわかるに違いない。
と、空がそんなことを考えていると。
くいくい。
引かれる空の手。
同時、聞こえてくるのは――。
「兄さん、後悔はしませんか? 協会上層部からの直々の褒美ですよ? 望むなら、すっごく高いマンションに住むことも可能です」
時雨の声である。
空はそんな彼女へと言う。
「すっごく高いマンションか……」
「はい。有名人やトップヒーローだけが住める、すっごく高いマンションです」
それはたしかに心惹かれるところがある。
けれど、空は時雨へと言う。
「ノインの問題を解決できそうなのに、それを無視してまで欲しくはないかな。そんなことしたら、あとあと後悔しそうだし……それに、なんだか胡桃には笑っていて欲しいんだよね」
「そうですか……」
と、ため息交じりの時雨。
彼女は空へと言ってくるのだった。
「どんなに強くなっても、世間から認められても……兄さんは兄さんで、少し安心してしまいました」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
とりあえず、この章はここでいったん区切りです。
尺の都合上、アフターストーリー的なものは、次話からやる幕間シリーズの中で描かせていただきます!
さて、こちらはいつも言ってることなのですが
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