第三百七十二話 空はノインを欲しがってみる②
「キミには半ば無理矢理ヒーローにした借りもあるからね」
と、言ってくる初老の男性。
空はそんな彼へと言う。
「それって、つまり……」
「こう見えても権力は持っている。なるべく善処しよう――キミには期待しているし、それと同時に信頼もしている。そんなキミが言うのなら、本当に安全なのだろう?」
「っ――はい! ありがとうございます!」
まさかこんなにうまくいくと思わなかった。
と、空が考えていると。
「キミはもはや協会に欠かせない戦力だ。少しでも、恩を売っておきたいんだよ」
と、言ってくる初老の男性。
彼は空へとさらに続けて言ってくる。
「とはいえ、キミの考えにはいくつか穴がある」
「穴、ですか?」
「その通り。さすがに男女二人、一日中付きっ切りというのは無理だろう? トイレや風呂もそうだろうし……そもそも、男女で同室ということ自体ナンセンスだ」
「…………」
「ん、どうしたのかな?」
「そ、そうですよね……男女同室はナンセンスですよね」
「?」
と、怪訝な様子の初老の男性。
空はそんな彼から視線を逸らしつつ、一人考えるのだった。
(胡桃との同室……やっぱり、常識的に考えると相当まずいよね)




