第三百七十一話 空はノインを欲しがってみる
「ふむ……詳しく聞かせてもらおうか」
と、言ってくるのは初老の男性である。
空はそんな彼へと言う。
「ノインを僕達の学校に通わせてあげたいんです」
「残念だがそれは――」
「あなたは僕のことを一位のヒーローになれると言ってくれました。そんな僕が常にノインを監視する――一時も離れることなくです。それでも安心できませんか?」
「しかし、彼女の洗脳が解けているという確信が持てない。それに以前、学校には怪人が潜入して大事件になっている。これ以上、危険を増やすわけにはいかない」
「方法は言えませんが、彼女の洗脳を解いたのは僕です。記憶もとある方法で取り戻しました……確信があります、彼女は絶対に安全だと」
「…………」
「もしも、彼女が怪人のようにふるまうことがあれば、僕が責任を持って鎮圧します。そして、同時に責任を持ってヒーローをやめても構いません」
「……はぁ」
と、頭を抱える初老の男性。
彼はそのまま空へと続けて言ってくる。
「それを褒美だと退く気はないのかな」
「はい」
「キミは英雄に近い功績を持っている。その褒美を、ノインくんのためだけに使うと?」
「はい」
「とても強いが、頑固なところが欠点……キミの父にそっくりだよ」
と、苦笑している初老の男性。
彼は言葉を続けてくるのだった。
「キミには半ば無理矢理ヒーローにした借りもあるからね」




