第三百六十六話 空はノインに話してみた④
「ねぇ、空……お願い」
と、再度言ってくるノイン。
空はそんな彼女へと言う。
「僕はノインのことを、本当の意味で助けたいと思ってる」
「それって――」
「僕はノインを奴隷にするよ。今すぐは無理かもしれないけど、絶対にノインを奴隷にする! そうするために、全力を尽くすって約束するよ!」
「……あんた」
と、何故か背後から聞こえてくるノインの声。
きっと、空が聞き間違えたに違いない。
空は気にせず、目の前のノインへと言う。
「正直、異世界に行ける条件はまだハッキリしていないんだけど……大丈夫! 僕が全力でノインを立派な奴隷にしてみせ――」
「ちょっとあんた!」
と、唐突に背後から掴まれる空の肩。
そしてその声も、間違いなく背後から聞こえてきた。
「…………」
猛烈に嫌な予感がする。
空は現実逃避するため、ノインを見る。
すると彼女は。
パンパンッ!
などと、手を叩いて空を拝んでいる。
まるでご愁傷様と言われている気分である。
だが、きっとそれは正しい……なんせ。
「唯花を奴隷にするってどういうことよ! この変態!」
いつの間にやら戻ってきた胡桃。
彼女は空を強制的に振り向かせると、肩を掴んでガクガクしながら続けてくる。
「なに!? やっぱり姉妹丼がいいわけ!? この変態! 立派な奴隷ってなによ! ほんっと信じられない! あたしが居ない間に、唯花に何言ってるのよ! どういうつもり!? このシスコン! スケベ! 鈍感! あんたにはあたしが居るでしょ!? それで満足できないの!? だいたいあんたは、いつもいつも――………」
そんな胡桃の説教マシンガンは、およそ三十分続くのだった。




