第三百六十二話 空とノインは話してみる②
空とノインは、それからも二人だけで話した。
会話内容はとりとめもないものだ。
やれ胡桃と同室になって、一悶着あっただの。
やれ胡桃と一緒に出掛けたら、怪人に襲われただの。
やれ胡桃と――
「ねぇ……あんたに聞きたいことがある」
と、空の思考を絶ち切って来るノインの声。
彼女は空へと言葉を続けてくる。
「あんた……姉さんの彼氏?」
「は、え!?」
「気がついてるか知らないけど……あんた、姉さんの話ばっかり」
そういえばそうだ。
空は先ほどから、胡桃の話しかしていない。
けれど、それには空なりの考えがあったからだ。
「ほら、話すならノインと共通の話題がいいかなって。だから、互いに共通の話題と言ったら、胡桃の話になるでしょ?」
「……そう」
と、再び沈黙するノイン。
彼女は空の答が納得いかなかったに違いない。
彼女は再び空へと言葉を続けてくる。
「そもそも……どうして二人は同室なの?」
「えっと、それは――」
「どうして、二人はあんなに仲がいいの? 私の記憶だと、姉さんは男嫌い」
「え、そうなの?」
「そう……姉さんは私以外、あんまり好きじゃない」
「…………」
胡桃のいないところで、胡桃のシスコンが暴露された。
きっと彼女には黙っていた方がいいに違いない。
「話を戻す……どうしてあんた、姉さんとそんなに仲良くなれたの?」
と、そんなノインの追及。
これは最初から全部話さなければ、納得しないに違いない。
(異世界のことは……なんかもう、みんな知ってるから、話してもいい気がしてるけど、どうなんだろう)
空は一人、そんなことを考えるのだった。




