第三百五十九話 空と胡桃はお見舞い中
時は胡桃ノインハグ事件から数分後。
場所はノインの病室の中。
「そろそろ落ち着いた?」
と、言ってくるのはベッドで横になるノインである。
彼女は空の隣――ベッドの前にある椅子に座る胡桃へと言葉を続ける。
「姉さん……テンションあげすぎ、うるさい」
「うっ……」
「私はいちおう病人……あんた、さっきので私の怪我が悪化していたらどうするの?」
「うぅ……」
「で、でも……姉さんに抱きしめられて、その……う、嬉しかった」
「ゆ、唯花!」
と、途端に笑顔になる胡桃。
ノインはそんな彼女へと言葉を続ける。
「姉さん、助けてくれてありがとう……それから、ごめんなさい」
「な、なに言ってるのよ! 謝る必要なんてないんだからね!」
「私は……洗脳されてた時のことも覚えてる……全部、覚えてる――ヒーロー達を痛めつけたことも、あんたに……酷いことも言った」
「酷いことって――」
「何があっても、姉さんのことは忘れちゃいけないのに……私はあんたに『人間の知り合いなんかいない』って……」
「唯花」
と、胡桃は立ちあがり、唯花の頭を抱く。
そして、優しそうな様子で彼女へと言うのだった。
「大丈夫、あたしは気にしてないから。だから、これからやり直そ?」




