第三百五十八話 空は胡桃と一緒にお見舞いに行ってみる③
「朝っぱらから……私の部屋の前で、恥ずかしいこと言うの……やめて」
と、言ってくるのはノインである。
彼女は空と胡桃を交互に見たのち、胡桃へと言う。
「こんなところで話してないで……入ったらいい」
「ゆ、唯花! 唯花! ちょっとあんた、大丈夫なの!?」
「わぷっ!? い、いきなり抱き着いてこないで……やめ、やめて」
「ねぇ、わかる!? あたしが誰かわかる!?」
「っ……あ、梓胡桃――あんたは私の、姉さん……だ、だからやめ――」
「そうよ! あたしがあんたのお姉ちゃんなんだから!」
むぎゅ~。
っと、胡桃はひたすらにノインを抱きしめている。
当然だが、胡桃は相当にノイン成分が不足していたに違いない。
さて。
一方のノインはというと。
「…………」
胡桃の猛攻に諦めたに違ない。
ご主人様に弄ばれる無抵抗ニャンコのようになっている。
(まぁなんにせよ、本当に一件落着したみたいでよかった)
空はうんうん頷きながら、いい加減ノインの助けに入るのだった。
ノインの言う通り、ここで騒ぐべきではないのだから。




