第三百五十四話 空はノインを倒してみた②
「いや、本当だって! あれ! ノインの鎧が!」
空が指さした先、そこではノインに異変が起きていた。
なんと、彼女の鎧が徐々に消えていっているのだ。
厳密には――。
(鎧がノインの胸の中央あたりに、吸い込まれてく?)
空はあの黒い鎧を見た際、どこか生物的だと思った。
やはりその直感は正しかったに違いない。
(なるほど、いつでも怪人の力を引き出せる生体パーツって感じなのかな。なんにせよ、いいものじゃないのは確かだ)
きっとあれのせいで、ノインは過剰に生命力を奪われているに違いないのだから。
さて、ノインの身体に徐々に取り込まれ、消えていく黒い鎧。
その下から現れたのは。
胡桃そっくりの少女だった。
違うところと言えば、髪型がショートポニーテールなところくらいだ。
あと特筆するべきところは。
全裸だ。
「よかった……本当によかった」
こうして鎧の下も確認した限り、ノインに怪我がないのが改めてわかる。
事前に《断空》の効果は確かめてはいた。
しかし、それでも心配するのが人の心という――。
「この変態!」
聞こえてくる胡桃の声。
同時、ガクガクと揺れる空の視界。
簡単だ。
胡桃が空の襟首掴んだまま、凄まじい力で揺さぶっているのだ。
そんな彼女はそんな行動を続けたまま、空へと続けて言ってくる。
「人の妹の裸みて『よかった(泣)』ってなによ! どういうつもりよ! そんなに涙ぐむほど嬉しいの!? 唯花の裸で喜ぶなら、あたしの裸みても喜びなさいよ!」
「く、胡桃?」
「何!? やっぱり妹がいいの!? これだから男は嫌なのよ! このシスコン! 変態! 鈍感男! 空のバカ!」
ガクガク。
ガクガクガク。
ガクガクガクガク。
「うっ……ちょ、おぇ」
この日。
空は勇者ブーストされた胡桃のガクガクのせいで、グロッキー状態になるのだった。




