第三百五十三話 空はノインを倒してみた
「こっの――バカあぁああああああああああああああああああっ!」
と言って、繰り出される胡桃の拳。
それは空の横っ面へとヒットし。
「ぐふっ!?」
空は思わず尻もちをつく。
正直、意味が分からない。
(え、僕なんで殴られたの!? 別にお礼を言われたいわけじゃないけど、どっちかっていうと、お礼を言われる場面だったよね!?)
「ちょっとあんた! 何してんのよ! どういうつもりよ!?」
と、胡桃は止まらない。
彼女は空の襟首引っ掴みながら、さらに言葉を続けてくる――懐かしい感覚である。
「あんたのこと信じてたのに! なんでいきなり唯花のことバッサリ斬ってるのよ!? しかも唯花動かないじゃない!? こ、殺したんじゃないんでしょうね!」
「え、あ――違うよ、胡桃! 誤解! 誤解だって! 僕は彼女を殺すつもりはなかったんだ!」
「殺人犯はみんなそういうこと言うんだからね!」
「いや、違くて! 本当に殺すつもりはなかったんだよ!」
空は言っていて思った。
あぁ、確かに殺人犯ってこういうこと言うなと。
(にしても、胡桃。当たり前だけど、妹のことが相当大事なんだな。見ていてほほえましいというか、無傷でノインを倒せてよかった……まぁ問題は)
「何黙ってるのよ! 何とか言いなさいよね! あ、あたしはどうすればいいのよ!」
この混乱している胡桃を何とかすることだが。
と、その時。
「く、胡桃! あれ!」
「なによ! そんなお決まりな手には、絶対に引っかからないんだからね!」
と、空が指さす方を見てくれない胡桃。
空はそんな彼女に続けて言うのだった。
「いや、本当だって! あれ! ノインの鎧が!」




