第三百四十九話 空とノイン②
空は胡桃を離れた位置におろした後、ノインへと向き合う。
そして、彼女へと言う。
「胡桃がさっき言った通り、きみは怪人じゃなく人間だ。それも、胡桃の予想通りなら彼女の妹の唯花さんってことになる」
「それで? あんたは私に何が言いたいの?」
「僕達を信じて、戦わずに投降してくれると嬉しいんだけど」
「それはひょっとして……あんたが私に怪我をさせると思っているから?」
「なるべく気をつけるけど、させないという断言はできない」
攻撃の際になるべく加減はする。だが、ノインは確実に強い。
加減しきれない場面が出てくるのは当然だ。
「そう……あんたは私の心配をしてくれるのね」
と、胡桃と全く同じ声――優しくて、安心するような声のノイン。
しかし、彼女は続けて言ってくる。
「その冗談、笑えない……」
その瞬間、ノインの姿が完全に消える。
その速度はあの黒騎士――老人よりも数段上だ。
(ノインは……後ろ! 防御は、間に合うか!?)
と、空の思考とほぼ同時。
炸裂するノインの回し蹴り。
「っ!」
空はそれを何とか受けるが、体が十メートル近く後退する。
それどころか、防いだ腕もビリビリ激しい痺れを訴えてくる。
(攻撃力も速さも申し分ない、やっぱりあらゆる面で僕に匹敵してる)
だからこそ危険だ。
元はただの人間の身で、こんな力を出しているノインも。
そして、いつか人間ベースの怪人が大量に生み出される事態も。
二つの面で、ノインを止める必要がある。
彼女を助けるため。
そして、その彼女から詳しく情報を引き出すために。
(負けられない、絶対に! 今の僕はヒーローなんだから!)
と、空は痺れる腕を払い、ノインへと拳を構えるのだった。
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今週末前後には、いつものペースに戻せるかとおもいます!
お待たせしてしまい、申し訳ありません!




