第三百四十八話 空とノイン
「胡桃は僕を信じてくれる?」
「なによ……あんただって昔、時雨と戦ったじゃない」
と、もっともなことを言ってくる胡桃。
空はそんな彼女にたいし、苦笑いしながら言う。
「あはは、まぁあれはノーカウントということで。怪人に寄生されてたわけで、僕が戦ったのは、厳密には怪人だし――っ!」
空は言葉を打ち切り、胡桃を抱いてその場から退避する。
すると、先ほどまで立っていた地面にナニカが無数に突き立つ。
(もしもあれが唯花さんなら、今のが胡桃の言っていた『不可視の槍』ってやつか。さっきの貫通力と速度、かなりてこずりそうだな)
と、空がそんな事を考えていると。
腕の中でもぞもぞ。
抱いていた胡桃が、何故か顔を真っ赤にしながら言ってくる。
「あ、あぅ……く、空……そ、その」
「もしもの時は胡桃にも頼るから、今だけは僕の言うことを聞いて、下がっていて欲しい。綺麗ごとだけど胡桃とあの子が戦うのは、見たくないんだ」
「わ、わかった……わかったから……その、は、早く下ろして」
何故か物分かりのいい胡桃。
空の予想では、確実に反論してくると思っていたのだが。
まぁいい――空としては、こちらの方が好都合なのだから。
それに。
「そろそろ本気でやっていい? もう……付き合いきれない」
そんな事を言ってくるノイン。
彼女を待たせるのも、いい加減悪いと思っていたところなのだから。




