第三百四十六話 空と胡桃とノイン
「その声。それに、不可視の槍を放つ異能……間違えるはずない! 唯花、そうでしょ!?」
と、ノインへ声をかける胡桃。
しかし。
「胡桃、危ない!」
空は胡桃を抱き寄せると同時、すぐさま飛び退く。
すると、さきほどまで胡桃が立っていた場所に、再び大量の何かが突き立つ。
けれど、胡桃はそれを見ても止まらず。
「な、なんで……唯花なんでしょ!? あたしがわからないの!?」
「胡桃、暴れないで! なんだかよくわからないけど、今は戦いに集中して! あいつは僕と同じくらい強い! もしも油断したら――」
「戦う必要なんてないんだから! あれは唯花! あたしの妹なんだからね!」
「妹って……え?」
わけがわからない。
けれど、するべきことはかわらない。
「時雨、氷菓さん! 二人の異能で倒れているみんなを外まで――安全な場所まで連れて行って!」
「兄さんはどうするんですか!?」
と、言ってくるの時雨である。
そこで、空はちらりと胡桃を見る。
(戦力の関係上、胡桃をは時雨と氷菓さんについていってもらいたいんだけど)
空は胡桃との付き合いのうちに、彼女の性格を半ば把握していた。
つまり、こういう時の胡桃は絶対にごねる。
であるならば。
「僕は胡桃と残って、黒騎士――ノインを何とかする」




