三百四十四話 空と怪人島の主
破壊されたシェルターの入り口から、中へと入って数分。
空達は今も全力で、シェルター奥へ向けて走っていた。
その理由は簡単である。
「ねぇ空、さっきの通信ってなんだと思う?」
と、言ってくるのは胡桃である。
空はそんな彼女へと言う。
「わからない。でも、きっとこの奥で何かあったんだ」
「だから、何かってなによ!」
「他のヒーローチーム全員が、やられるような出来事。最強のヒーローである時雨を呼ばないと、やばい……そう思わざるを得ない出来事だよ」
「そ、そんなの――」
胡桃の言う通り、そんなのあり得ない。
なんせ、空はトッププロたちを集めた選抜チームの実力を、完全に見誤っていたのだから。
(シェルターに入ってから、怪人たちと戦った形跡が沢山あった)
当初の『物量に押されて負けるのでは』という心配が、アホくさい光景。
きっと、ヒーロー達は圧倒的な力と物量で来る怪人を、コンビネーションで切り抜けたに違いない。
これに関しては、さすが選抜ヒーローと言わざるを得ない。
だが。
(それでもきっと消耗はしているはず。そんな時にものすごく強い怪人と出会ったら、いくら選抜チームでも――っ!)
と、その時。
空達の目にようやく、その光景が見えてくる。
すなわち。
一人の漆黒の騎士。
そして、その前に倒れる数多のヒーロー達の姿である。




